こんにちは、のぶもんです。
まずは下の写真を見てください。「うーん、これは日本のどこの家かな?」と思いますよね。実はこの建物、台湾の淡水にあるんです!
しかも、日本から建物を移築したものとなると、かなり驚きですよね。建物の名前は「一滴水紀念館」と言います。
横から見るとこんな感じ。かなり大きめのお屋敷であることが分かります。
では、中に入ってみましょう。玄関も立派ですね。
この建物は、小説家・水上勉の父・覚治が福井県の若狭地方に建てたお屋敷。外観も素晴らしいですが、よく見ると梁がとても立派です。釘を一本も使わずに建てたそうです。
中に入ると、正面の座敷がとても美しいです。
囲炉裏のある板張りの座敷。今の日本でも、大変貴重な空間になっていますね。まるで、白川郷や五箇山にでも行った気分になります。
縁側も非常に美しいです。惚れ惚れします。
このように資料的な意味合いが強い古民家建築は、部分的に屋根や梁をガッツリ見せてくれます。今ではもう、こんな立派な梁を持つ屋根を作れないと思います。
水上覚治に因んで、息子の水上勉の書籍を展示するコーナーがありました。
一滴水という名前の由来ですが、もともとは禅宗の「曹源一滴水」という言葉に由来するようで、水上の作品にはたびたび登場します。
福井県の若狭には、「若州一滴文庫」という水上が中心となって設立した文化活動施設があるそうです。(これはこれでいつか行ってみたいです)
面白いのは、台湾をルーツに持つ小説家・陳舜臣の作品コーナーも設置されていること。被災地の神戸にゆかりがあり、水上とも親交の深い陳の作品が、一族のふるさと台湾で展示されるというのも不思議な縁ですね。(なお、陳舜臣は神戸生まれです)
なぜ、こんな大掛かりな移築プロジェクトが実行されたのか?
きっかけは日台両国の大地震被災体験です。(1995年の阪神・淡路大震災、1999年の9.21大地震)
1999年の台湾大地震の際、被災した台湾の人々を激励しようと、阪神・淡路大震災で被害を免れた福井県の民家を台湾にプレゼントしようというプロジェクトが生まれたのだそうです。
そこから長い年月を経て、2009年に古民家の移築が完成。2011年(この年は東日本大震災が起きた年です)に、一般公開にこぎつけました。
館内には、移築に関する資料が展示されていました。
現地の日本家屋を修復するだけでも大変なのに、日本の現役の古民家を移築しちゃおう!という思い切ったアイデアと、尽力された数多くの方々に敬意を表したいと思います。
そんなドラマを秘めつつも、観光客の姿はあつもまばら。すぐ近くにある滬尾砲臺とセットで見学しに来る人が時折いるくらいです。正直もったいないです。
おかげで(?)静かな気持ちで、本当に福井の片田舎で立派なお屋敷にお邪魔している気分になれますが…。
数ある淡水の観光地の中ではかなり知名度が低いのですが、アクセスは意外とよいので、ぜひ砲台とセットで足を運んでください。
【施設情報】
「一滴水紀念館」
住所:淡水區中正路一段6巷30號
開館時間:9:00~16:30(月曜定休)
アクセス:MRT淡水駅から淡26番バスなどで約15分。滬尾砲臺バス停下車です。